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秩父讃歌

今年の夏は雨続き・・・いや、台風続きで思うように釣りが出来なかった。
9月も残すところあと数日、このままフェードアウトして禁漁を迎えるものと、
半ば諦めの気分で過ごしていたが、それでも最後の定休日の火曜日だけは気温も上がり
天気もすこぶる良いと、嘘つき天気予報士のお姉さんが言っていた。
今回もいつものようにお姉さまを信じて、痛い思いをするか、それともはなからまったく別の用事に
気持ちを切り替えて休みを迎えるか・・・、なんて考えながらも、70Lのバックパックに
テントやら寝袋を詰め込んでいる自分がいる。相変わらず若い綺麗なお姉さんの言葉を信じやすい
鉄人48歳のようで・・・。

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月曜日を無理やり休みにし、久しぶりの連休である。
不思議だが雨が降っていない・・・。
正直お天気予報士のお姉さん、どうもありがとう。ちょっとだけ疑ってすみません・・・。

目的地のテント場まで約8km。
20kgのバックパックが肩に食い込み悲鳴をあげる。
昨年は色々詰め込み、14kgであったが、今回は必要ないものを沢山抜いて
20kgに増えている。いったいどういう事!???
交通事故の後遺症がいまだに体に残り、腰と右足に不安があるが、
今回の相棒が元自衛隊員!そのうえ若い登山家である。頼もしい。
沢山買ったビールと焼酎は全て彼の80Lのバックパックに入れて持ち上げてもらった。
なにしろ、僕より10L 大きなバックパックを背負って来たという事は、そういうことになるでしょう!(w
一年近く通院をし、歩いていなかったので、初めからトレッキングポールを使い、休み休みのリハビリ登山。
休憩直後は会話も出来るが、30分も歩けば無言になってしまう。

なぜならば・・・・重いから・・・・(w
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ふと、
僕にとっての緑のトンネル・・・とは!?
噴出す汗を拭いながら、考え始める。
少しでも背中の重みを忘れたいのと、まだまだ続く終点の無いような登り坂を記憶から消してしまいたいからか・・・。

落葉樹でなければダメだよな・・・。
むくの木  イチョウ   クヌギ    クルミ   ケヤキ   ・・・・。

毎年くぐる、緑のトンネルでも、一年に一度葉が落ち代わる事でリセットされ、同じトンネルではなくなる。
もちろん枝も折れるだろうし、枯れてしまう木もある。もちろん同じ葉の色なんて一度も無い事だし。
冬になり全てが雪の白で覆い尽くされ、新緑の時期に再会できる。
だから毎年会いたくなる。
そして会いにくる・・・。

降り注ぐ緑の葉
進行方向も全て緑である
そして、足元には光量の少ない森の中を、蛍光色の苔が鮮やかに道しるべしてくれているよう。
まるで緑のカーペットのようで、上に足を置かねばならぬ所では
「ごめんなさい、おじゃまします・・・。」
何気に呟いてしまう・・・のも、自然への敬意からなのか、それとも本当は
入ってはいけない領域に、無理やり入ってきてしまっている事への謝罪の気持ちからなのか・・・。

森の緑に包まれる事

少しだけ 人間である事から離れられるような気がします。

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暗くなる前にテントの準備を!
見上げる隙間の、ほんのちょっとのスペースにお星様を期待していたが
今宵は無理そうである・・・。

焚き火とランタンの柔らかな明かりに、何を想うか・・・。
歳をとれば解決できる事も多くなるが、それと平行して問題も多くなるもんだ。
無理しないで、考える事をやめるのもいいかもしれない。
その分、たくさん想うようにしている・・・。
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食事を済ませ、お互いのテントに転がり込む。
もちろん、眠れるなんて想ってもいない。
これから朝までが、僕の「想い」の大切な時間なのだ。

十文字峠の麓の沢の脇に横たわる。
頭を三国山に向けて眠る事が毎年の恒例。
寝袋には入らず、まず大の字に・・・。
右手に甲武信ヶ岳や和名倉山
右足の方向に雲取山や飛龍山
左手方向には両神山や南天山、そうそう二子山も・・・。
左足の方向には、宝登山や城峯山。
そして、それから・・・、股間の辺りが武甲山に(w。
沢山の奥秩父の山々の懐を感じ、そして想い大地に眠る。
英気を養う事ができるのも、もう少しがんばれそうな気がするのも、
そして少しだけ甘える事ができるのも、この懐の中だけの気もするし・・・。
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いまだ歩けていない十文字峠。
八ヶ岳山麓で採取された黒曜石を、石器の材料として佐久盆地から秩父まで運んだらしい。そこから石器が関東に広まったとか・・・。
川上村で生まれた子馬を、秩父まで連れてきて、大きくなったら川上村に戻したり。
信州方面からの三峯神社への参拝は、一日に500人におよんだとか・・・。
とにかく十文字峠は石器時代からの歴史深い峠道だったのだ。
長野県の川上村から秩父の栃本地区まではおおよそ20km。
来年あたりは歩いてみますか・・・。

なんて想ってみたり

1884年
秩父の農民が明治政府に対して起こした武装蜂起事件。
自由民権運動の影響下に発生した、激化事件の代表・・・とか、
いろいろな言われ方をしているが、正直、どれが一番相応しい言い方なのか・・・
僕には分からない。
ただ、きっとこの時代に生まれていたら、僕も秩父困民党の一員だったろう。
最初に立ち上がったのは、秩父の農民だったが、隣県の長野県からも、群馬県からも加勢したらしい。
結局、秩父出身者を中心とする部隊は、この十文字峠を越えて、梓山に至るが、鎮台兵と交戦になり
梓山で壊滅したらしい・・・。
以前に読んだ本の中からの、一説がよみがえる。

困民党の戦士達。僕らの先祖達・・・。
希望や怒り、そして悲しみ。
報われない無念を胸に、敗走した兵士達の足音が聞こえてきそうだった。
たしか、長野県出身の総裁は、北相木村の菊池寛平だったと思うが・・・。
なんて沢山の想いと気配を感じながら、テントの中でランタンの明かりを見つめていた。
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いつもなら、静かにチョロチョロといった、心地よい水の音も
増水でザーザーと濁音で流れている。
眠りに堕ちるまで、この音を聞いていたわけだが嫌ではなかった。
無音という雑音を楽しむのも、この野宿の楽しみなのだが、自然のままを受け入れる事で
夜の演出も変わってくる。
今夜は、風の音も枯葉の落ちる音も感じられない分、沢山の事を体験できた。

夢だったのか
それとも
本当の事だったのか!?

夜と朝の狭間
薄っすらと、薄っぺらな一枚の幕の向こう側が明るく感じた頃に少しだけ深い眠りに堕ちたようだ。
まだ小鳥のさえずりも無い、静寂が支配していた頃。
沢の音のなかに、微かに人の話し声のようなものが聞こえる気がした。
僕は眠っている。
夢かもしれない。
それとも・・・
結局、そんな訳のわからない状態で出した答えが、どちらでも良い!  だった(w
時々クスクスって笑っているようにも感じた。
ちょうど、テントと沢の間の大きな木の所からだ・・・。
フライロッドを立てかけている大きな木の所。
竹竿にビクを腰にくくり付け、もちろん餌はミミズ。
地下足袋姿に無精髭・・・。
勝手な想像が沸いてくる。
「こんな釣竿じゃ、岩魚は釣れねぇ~よ。」
初めて見るフライタックルを手に取り、笑っているように思えた。もちろん勝手な想像だが・・・。
不思議と怖くはなかった。
その昔、釣り名人としてこの辺では有名だったなにベエさんだか、なにザエモンさんだか分からんが
この沢が彼のカーティスクリークだったのだろう。
彼の静かな笑い声の後、僕もつられて笑っていた。
クスクスと・・・。

それからは覚えていない。
そのまま眠ったのだろう。

今度来る時は、幾つかのフライをそっとその木の根元にでも置いておく事にしよう。
どんな反応をしてくれるか、今から楽しみである。
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寒さで着込んだダウンジャケットも、寝ている間に脱ぎ捨てていた。
目覚めと同時にテントから飛び出すと、待望のお天道様が木々の隙間からこんにちはをしてくれている。
昨夜よりも沢の水も少なくなっているようで、透明度も増している。
温かいコーヒーをまず飲み干し、AMラジオのボリュームをあげてみるが
やっぱり耳に入ってこない。
早く竿を出したい・・・
ふと、昨夜の出来事を思い出しフライロッドを手に取るが、これといって変わったことも無かった。
やっぱり夢だったのか・・・。

今日一日が、釣れても釣れなくても釣り納めになる。
サブバックに貴重品を詰め込み、テントはそのままに残し釣りあがる事に。

朝の日差しが、今までに感じた事が無いくらい痛い
森の香が、すごく濃く感じる

気持ちの良いスタートだったが、釣りはじめてものの30分で3人の釣り人に先行されることに・・・。
マナーとして、せめて一言声をかけて欲しいが、逃げるように僕達を追い越し沢の上流へと消えていった。
いつもなら追いかけていき、一言物申す!・・・のだが。気分悪く今期を終了するのも嫌なので
そこから数百メートル釣りあがり、魚影が消えた所で引き返すことにした。
多くはないが、そこそこ岩魚も釣れた。
尺まで届かなかったが、まずまずのサイズも釣れ、締めくくりには何の問題も無かった。

そう、釣りには何も問題無いのだが・・・
ひとつだけ心残りが・・・。
大好きな小鳥、ミソサザイに会う事ができなかった。
日本最小の、まるでピンポン玉のような鳥。
「チッ・チッ!」  と泣く姿が可愛くて、釣り中でもこの小鳥を見つけると見入ってしまう。
すばしこくて、写真に収めることができないのだけど・・・。
帰りの道中も、ずっと耳を澄ませ、チッ・チッ! を、探す事に・・・(w
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テントを詰め込み、テント場を元の状態に戻し早めの撤退です。
・・・と、言っても時間はお昼なのだが・・・。
車に戻る頃は4時近くなっている事だろう。

秋の足音を聞きながらひたすら歩く。
少しくらい夏の余韻は無いものかと探してみるが
いっこうに見つけることが出来なかった。
木々の葉は確かにまだ緑が多いが、もちろん色づき始めている物も多い。
蝉時雨の中を歩いていた昨年と、落ち葉と心地よい風を感じながら歩いている林道が同じなんて・・・

時折ざわつき、葉のこすれあう音・・・
ハラハラと舞い落ち、先に落ちている葉に重なり合う音・・・
踏みつけるとサクッ! と鳴く、乾いた音・・・

もし、木々の葉っぱに言葉があり、これらの音が彼らの会話だったら・・・声だったら・・・

葉揺語なんてどうだろう・・・。

森と会話するには覚えないといけない言葉かもしれませんが・・・(w




静かに幕を閉じた2016年の釣り。
歳を重ねるごとに、焦る気持ちもなくなってきた。
釣りがメインだったはずなのに、いつの日からか、オマケなような存在にも感じられる。
別に、いい加減に考えている訳ではありませんよ・・・。
釣りを通して、もっと沢山の楽しみ方を覚えたからなのかもしれません。
選んでその土地に生まれてきた訳ではありませんし、どうしても嫌なら引っ越せばよい。
もしそこに生まれてきた意味があるのなら、思う存分自分なりの感じ方でここを楽しんでやろうか・・・と。

秩父讃歌

まだまだ続きます(w














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by summerdun | 2016-10-04 12:35 | Fly Fishing